ブルーライジング第1章1-1

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喧嘩に反則なんてものは無い。拳一つで挑もうが、周りのものをうまく使おうが、最後に立ってたやつが勝つ。

けど、反則級に強いヤツというのは、やはりいる。

今の相手がまさしくソレだ。

有刺鉄線に囲まれ、触れれば爆発と感電を起こす。

砂地に散らばる有刺鉄線を巻いたバットは、爆弾が仕込まれていて、砂地では地雷の役目も果たす。

殴れば硬く、殴られれば一発で意識が飛びそうになる。

高々と抱え上げられ、砂地に放り捨てられる。

倒れ、咳き込む蒼汰の首を無表情に締め付けて来た。

「ハァ…ハァ…」

硬く湿り気を帯びた砂地。

うつ伏せで倒れたまま蒼汰は呼吸を整えていた。

額からは大量の汗と血が地面に流れ落ちていく。

ダメージを蓄積した身体はいちいち全力を出さないと、腕一本動かない。

血でぼやける視界には自分を見つめる大勢の目と有刺鉄線が見える。

立たねぇと…

倒れようと思うならいつだって出来る。

喧嘩は最後まで立ってたヤツが勝つんだ。

バットを握りしめた相手に、蒼汰は拳で挑む。

一か八か、相手の延髄めがけて飛び上がるが、バットの爆破で撃墜される。

汗に砂が絡みつき、ざっくりと裂かれた額から大量の血が溢れ出る。

後頭部を踏みつけられ、体ごとバウンドした蒼汰の周りから砂煙が立ち込めた。。

頭を鷲掴みにされ、有刺鉄線に振られる。

身体に身に着けているのは青いショートタイツと同じ色のレガースのみ。

むき出しにした蒼汰の身体に有刺鉄線が絡みつき、爆炎に包まれた。

砂地を染める赤い液体はほぼ蒼汰の身体から出たもの。

歯を食いしばって蒼汰は立ち上がり、血まみれの身体で相手の攻撃を受け止めた。

蒼汰の身体が逆さまに抱えられる。

身体が十分に上がりきらないまま、脳天から砂地に突き刺さった。

小さくバウンドし、うつ伏せのまま落下する。

砂煙が上がる中、蒼汰の意識が朦朧としてるのか虚ろな瞳が遠くを見つめていた。

引き起こされ、がら空きの胴体をバットで振り抜かれる。

膝から崩れ落ち、砂地に沈んだ。

もうダメか。

観客から諦めとも言えるようなため息が漏れる。

だが、その拳は砂を握りしめていた。

「オオオ…」

会場がどよめいた。蒼汰が立ち上がってきたのだった。

既に失った体力を気持ちで補う。

猛攻を気合でしのぎ、一瞬の隙を見つけた蒼汰は相手の延髄に蹴りを入れる。

倒れ込んだ相手を勢いで引き起こし、有刺鉄線に振った。

コロッサスの巨体が爆炎に包まれた。

ふらつく相手の頭に膝蹴りを叩き込む。

倒れ込んだコロッサスの片足を捕らえた。

太い鉄パイプのような脚に全身で絡みつく。

身体の小さい蒼汰の真骨頂は関節と絞めだった。

相手が苦悶する。

だが、圧倒的な力の差は強引に蒼汰を引き剥がした。

サイレンが鳴り響き、会場がざわつき始める。

全てはこの一瞬を見るためと言わんばかりに、全ての視線がリングを見つめていた。

熱気を帯びる中、有刺鉄線の餌食になった蒼汰は、一方的な攻撃にただ耐えるのみになっていた。

約20秒後

轟音が鳴り響き、リングが爆炎に包まれる。

周囲を覆う煙がはれてくると、コロッサスはノソリと立ち上がった。

観客は仰向けで大の字になっている蒼汰に注がれた。

あぁ、今回もダメだったか

今日は期待できそうだったがなぁ

いつも良いやられっぷりだ。

灰をかぶった蒼汰は、自力で立ち上がる事は無かった。

10分00秒

大和蒼汰爆破KO負け

-またココかよ…-

目が覚めると映る景色はほとんど決まっている。

何度も何度も目にした景色。

何もない真っ白な天井。

「クソ…」

蒼汰は小さくつぶやき、奥歯を強く噛み締めた。

血でぼやける視界に自分を見つめる大勢の目、遠くに響く歓声。

火傷と無数の傷を負った全身が覚えている痛みが試合を思い出させる。

大体、気がつけばいつもココにいる。

身体は痛むが、今回は動けないほどじゃない。

骨にヒビが入った程度だろう。

蒼汰は寝ていたベッドを早々に脱出し、トレーニングルームへ足を運んだ。

包帯だらけの身体を晒し、青のアンダータイツとレスリングシューズを

身に着けたのみの姿。

練習する時はいつもこの格好で行っている。

誰もいないトレーニングルームで蒼汰はひたむきに汗を流す。

未だ完治はしていない傷がたまにうずき、痛みに顔を歪めた。

だが、立ち止まれば終わる。

喧嘩に勝つには絶えず喧嘩を続けるしか無い。

蒼汰は植え込まれた闘争心に身を任せ、トレーニングに打ち込んだ。

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