ポイズントード
その男は男が好きだった。
男なら誰でも良いというわけではない
若くて活気の良い少年が何よりも好きだった。
部活帰りの学生を男は毎日舐め回すように眺め、時に盗撮をしていた。
幼少から、男は醜いとずっといじめられ続けていた。
オイ、カエル男
男はそう呼ばれ、からかわれ続けていた。
幼少の傷は、成長してもその影を深く落としていった。
男は自分に自信が全く持てないまま、人とかかわらないように生きてきた。
外出するときはいつもマスクで口元を多い、帽子を深く被っていた。
長年、男は引きこもりの生活をしていたため、脂肪だらけの太った身体になっていた。
自分が持てなかったものにたいしての羨望とあこがれ。
初めはそんな目で見ていた。
だが、次第にそれはそんな男から愛されたいという欲望へと変わる。
男は頭が良かった。
ある一人にターゲットを絞り、新著に接触を計っていた。
坊主頭で体格がよく、いつも汚れた野球ユニフォーム姿の学生。
毎回仲間たちと歩いているが、ある曜日のある時間帯だけ、彼は一人になる。
男はそのタイミングに合わせ、その学生の前でわざと倒れてみせた。
マスクを着け、帽子を被っているせいか、病人に見せかけるのは簡単なことだった。
案の定、目の前で倒れた男に学生は駆け寄ってきた。
間近で学生に触れられた事に男は興奮し、息が上がっていた。
間近で香る彼の汗の匂い。
学生はより心配そうに身体を起こそうと、男を抱きかかえる。
男は今までに無い幸福感に包まれた。
彼を独占したい。もっと一緒にいたい。
男の興奮が高まれば高まるほど、学生は男を心配した。
近くに家があるから…と男はわざと大丈夫だと言った。
間違いなく彼ならこう返してくれるだろう。
じゃあ送っていきますよ。と。
男は学生に支えられながら、家につれて帰ってもらった。
この日のために家は徹底的に掃除をし、キレイにしてある。
リビングにあるからと男は玄関でクツを脱ぐのをもたつかせた。
彼の顔をチラッと見ると、とても心配そうな顔をしていた。
素直で真っ直ぐな学生だった。
男は玄関に上がる時、わざと躓いた。
学生は慌てて「失礼します!」と言ってクツを脱いだ。
靴下が汚いのを少し気にしてか、つま先立ちで男を支えながら、男は学生に付き添った。
男は壁伝いに仕掛けてあったスイッチで玄関のカギをかけた。
自分で作成した自慢の一品だ。
台所に置いてあるクスリのビンに手を伸ばし、中に入れておいたサプリメントを飲み干す。
男は学生にお礼を言い、お茶を入れるからというと、学生は案の定断ってきた。
だが、それは想定内。
何度もしつこく言えば、彼は折れるだろう。
命の恩人だから、助けてくれてありがとうだなんてムシが良すぎると、男はしつこく食い下がった。
案の定、学生は折れた。
日常の話や部活の話を聞く。
それは自分が決して得ることの出来なかった彩りの溢れた世界。
男は自分が得られなかった人生を生きている彼が羨ましくて仕方なかった。
帽子をとった学生は坊主頭で端正な顔立ちをしていた。
慎重が高く、肩幅が広かった。
男はますます、学生が羨ましくなった。
次第に男の欲望は膨れ上がる。
自分だけのものにしたい。
緊張したのか、学生はトイレに行くと言ってきた。
ちょうどいい。
男は欲望を叶える計画を実行した。
トイレに案内するといって学生を自分の部屋へと案内した。
そこで男は学生にすかさずクロロフォルムを嗅がせる。
学生は歯を食いしばりなんとか耐えていたが、やがて眠りに落ちた。
学生が目を覚ますと、両手両足に手錠を嵌められていた。
助けを呼ぼうにも、音が何かに吸収されているのか部屋に響かない。
防音装置を施した部屋は、外に声が漏れることは無かった。
唯一自由になる首を傾けると、男が自分のバッグを開け、顔を突っ込んでいた。
部屋には自分が着ていたはずのユニフォームが散らばっている。
学生が目覚めた事に気がついた男はマスクを取りニタリと笑った。
それはまるでカエルのような顔をしていた。
男が自分の身体を触っていた。
その感触があまりにも気持ち悪く、学生の肌は鳥肌が立っていた。
触んなこのカエル野郎!!
学生は力の限りに言い放った。
その一言に男の表情が変わる。
学生は泣きながら震えていた。
ごめんなさいと震えた声で言い続けた。
鍛えた肉体から血が流れていた。
男はナイフについた血を長い舌で舐めとった。
男は学生証のコピーを取り、裸で拘束されている学生の写真を撮った。
もしも自分に逆らえば、この写真と名前をネットにばら撒くと学生に言った。
そうされたくなければ言うこと聞けと。
学生はその日から毎日男の家に立ち寄るようになった。
親戚が近くに引っ越してきた。
仲間たちにはそう言ってごまかしていた。
男と学生の奇妙な関係が始まった。
汚れたユニフォームのまま立たされ、まんべんなく匂いを嗅がれ、その後裸にされる。
そして男が用意したパンツを履き、その上から股間を舐められる。
野球一筋で生きてきた学生は女を知らなかった。
練習漬けの日々で、ヌクこともない彼は、男の舌に感じついには果ててしまう。
そしてその写真をまた撮られ、学生はより男に独占されるようになっていった。
男のために野球の練習をし、男のために身体を鍛える。
学生は野球という夢を男に支配されてしまっていた。
男はまるで自分に学生の遺伝子を写し取るかのように、毎日股間を舐め回し、
精液を吸い尽くしていった。
その日々に終わりが来る。
ある日、テレビで見た報道に男は愕然とした。
その学生は自らの命を断ったのである。
男は学生に自作した様々な毒薬を投与していた。
苦しむ反応をみて、男は興奮していたのである。
そして満足すれば解毒剤を打ち、毒の効能をかき消していた。
学生は長い間野球の練習をしていなかった。
彼を独占出来たことに満足した男は、学生の変化に気がついていなかった。
学生が仲間たちと通りを歩かなくなったことに。
だいぶ前から学生は野球をやめていたのである。
ユニフォームは、洗わないままにしておいた。
学生には意中の相手がいた。
男に弄ばれる日々を過ごす内に、彼もまた自身が求めている事に抗いようが無くなっていった。
そしてずっと片思いをしていた親友に思い切って告白したのである。
野球もその親友を一緒にいるためだった。
血の滲む努力で親友とバッテリーを組むことが出来た。
苦楽を共にし、勝利で抱き合い、負けて一緒に泣いた。
春の選抜試合の最後の日。決死の告白は乾いた笑いと蔑んだ好奇の目に散った。
そこから学生は仲間たちから孤立した。学生は野球部を去った。
夏の大会が始まる当日。
学生は遺書を遺し、飛び降りたのだった。
親友にゴメン、頑張れと書いて。
男は狂乱した。
男はいつの間にか学生を愛していた。
引き出しにあった毒薬を自らの身体に打ちまくった。
男は悶絶したが、死ぬことはできなかった。
毎回、少量で自分の身体で実験を繰り返していた影響で、抗体が出来ていたのである。
その代わり、男の顔はより醜くなった。
カエルのように目が離れ、身体はいつの間にか紫色に変色していた。
その日から男はフードをかぶり、夕暮れの街を徘徊した。
愛する彼の幻想を追って。
時に道行く野球部員に毒薬を打ち、股間をなめまわした。
深刻な社会問題に発展していたある日、男はいつものように毒薬を片手に街を徘徊していた。
そこで職務質問を受ける。
男は走り出したが、通りを走る車とぶつかり、はねられた。
死に瀕した男は学生の姿をまどろみに見た。
男が次に目を覚ました時、そこである人物に出会った。
お前のテクニックを見せてやれ。
グラウンドスターに新たな商品が生まれた。
ポイズントード。
かのスーパーヒーロー、マックスボマーを恐怖のどん底に陥れた怪物である。
毒で弱らせ、執拗なまでに急所を狙い、動きを封じる。そして汗ばむ股間を
長い舌で舐め回す。
精神的ダメージの方が大きいファイトスタイルは精神から相手を崩壊させていく。
グラウンドスターで唯一専属スポンサーが付き、彼の試合は招待客しか
観戦することができない。
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